2025年度税制改正、iDeCoのステルス改悪
2025年度の税制改正、iDeCoの掛金限度額の引き上げが盛り込まれる一方で、いわゆる5年ルールが10年ルールに変更されるのが改悪と指摘されています。
しかも、この変更が大きくアナウンスされることなくさりげなく文章内に書かれていたことで、ステルス改悪だ、財務省の陰謀だ、iDeCoをやめたいなどの声が上がっています。
ちなみに私は62歳。
60歳の定年退職時に企業型確定拠出年金の一時金も退職金も受取済みなので、この問題は関係ありません。
ただし、60歳から開始したiDeCoがあるので、iDeCo周辺の議論には関心を持たざるを得ません。
いわゆる5年ルール
5年ルールというのは、iDeCoと他の一時金を時間差で受け取る場合のルールです。
まずiDeCoを一時金で受け取ったとき、積立期間をベースに退職所得控除が獲得でき、受取時に非課税枠となります。
さらにiDeCoを受け取ったあと5年内に退職金や企業年金の一時金を受け取ると、退職金等のほうの退職所得控除を別枠とカウントせず、1つの退職所得控除として考える、というものです。
今回これが5年から10年に変更になります。
これが改悪と言われています。
しかし、受け取りの順番が変わるだけで非課税枠の上限が変わるほうがおかしいわけです。
その意味で今回の変更は穴を塞いだだけと言えます。
だからこそ大きくアナウンスせず、さり気なく変更したのでしょう。
5年ルールを使えた人はいたのか
そもそも5年ルールを有効に使えた人はいたのでしょうか。
5年ルールを有効に使うためには、
- 60歳でiDeCo・企業型DC等を一時金で受け取る
- 65歳でその他の退職金を受け取る
必要があります。
65歳で退職金を受け取るには定年が65歳になっている必要がありますが、実現できているのは大企業が多いでしょう。
中小企業勤務者だとあまり関係ない感じです。
もちろんこれから65歳定年が普及し、iDeCoの累積掛金が大きい人が現れると、適用できる人が増えたはずです。
だからこそ今のうちに穴を塞ぎにかかったのでしょう。
退職金関係で本当に注意すべき制度変更は
今回の5年ルールの変更は些細な変更です。
もしかしたら、これからもっと重大な変更がなされるかもしれません。
これは退職金の税制がそれだけ有利に設計されているためです。
本当に受け入れられない変更が来た際は全力で抵抗すべきです。
退職控除枠の変更
現在は勤続20年以下で年40万円、20年超で年70万円の控除枠があります。
これを見直す動きはすでにあります。
勤続20年を境に控除枠が増える点をどうするか、控除枠の金額自体をどうするかの2点が議論の中心です。
iDeCoに加入していれば、勤続年数はiDeCoの加入期間で通算できるので、勤続年数によって枠を変えるのはすでに無意味になっています。
したがって勤続年数にかかわらず、控除額は一定になる可能性が高いと思われます。
一方、控除枠の金額ですが、大きく減ることはないでしょう。
現在、22歳から60歳まで転職せずに勤務すると、退職控除は2,060万円(40万円×20年+70万円×18年)です。
勤続年数に関係なく、年50万円くらいになるのではないでしょうか。
この場合は退職控除額は1,900万円になります。(50万×38年)
退職所得の1/2課税
退職金の税金を計算する際、退職金から退職所得控除を引いた後、1/2するルールがあります。
これは退職金の大きな利点です。
なぜ1/2になるのかはよくわかりません。
ただ有利なことは間違いないです。
私も退職前1年分の給与を退職金として支給してもらうよう会社と交渉しようかと考えたほどです。
1/2課税がなくなれば、支払う税金は大きく増えます。
現時点でも勤続年数5年以下の役員の退職金、勤続5年以下の一般社員の退職金のうち300万円を超えるものは1/2課税が適用されなくなっています。
今後適用除外が拡大する可能性はあります。
分離課税
所得税は基本的に総合課税されますが、退職金は分離課税とされています。
退職課税自体は累進課税ですが、分離課税なので、その年受け取った給与所得等には影響しません。
もし、退職所得が総合課税されると、退職年の所得税がきわめて大きくなると思われます。
さすがにこの方向に行くことはないと思いますが…。
たとえ課税が強化されてもiDeCoの利点は大きい
iDeCoを含めた退職金について、今後は課税が強化されるでしょうが、まだまだ利点は大きいと思います。
少なくとも、1/2課税と分離課税が廃止にならない限り損になる心配はないでしょう。
むしろたっぷりと税金を支払う必要があるくらい利益が出れば喜ぶべきことです。
改悪と5年ルールの10年ルールへの変更が実質的には大した問題ではなく、一方で掛金の上限額のアップは間違いなくメリットですから、iDeCoの改正の方向性は間違っていないと思います。
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