介護保険制度は持続可能か
母の介護度が進む中で、介護保険制度との関わりが深くなってきました。
確かに家族の負担を軽減するという点でありがたい制度ですが、同時にこの制度が持続可能なのか疑問に思うことも多いです。
介護保険制度は2000年の4月に始まりました。
これまで家族の負担で成り立っていた介護を、社会保険の枠組みで社会全体でカバーしていく仕組みに変えました。
具体的には介護度に応じて保険給付が行われ、給付の範囲内で各種のサービスを利用するというものです。
自己負担は当初1割、今は収入に応じて1割〜3割となっています。
施行から20数年が経過し、この間高齢化が進み、保険給付は増え続けています。
開始当初に比べれば、保険給付額は4倍程度になっていると思われます。
これまでも改正のたびに少しづつ給付を抑制し、負担を増やすようになってきていますが、そろそろ限界に思えます。
遠からず行き詰まるように思います。
介護保険制度が行き詰まると考える理由
健康保険との違い
高齢化に伴い同じ様に持続可能性に疑問を持たれているものに健康保険があります。
保険制度の維持のため、負担増や給付の抑制措置が取られています。
入院期間一つとっても、以前に比べてだいぶ短くなっています。
これは医療の進化もありますし、多くの人が過剰な医療を望まなくなってきていることもあります。
病気は治療すれば治るし、治って退院することは病院側にも患者側にも基本的にはメリットの有ることです。
したがって健康保険の給付が減っても利用者は実際のところ困りません。
飲みきれないほどの薬が処方されなくなっても、今更健康状態が悪化することもないでしょう。
したがって、今後とも高齢者が増加することで保険料給付の増加は避けられないものの、爆発的に保険給付が増える構造ではありません。
介護度が改善することはない
介護度が進まないようにする措置がいくつか取られていますが、一度介護が必要になった人が改善していくことはありません。
介護は病気ではないので、治ることはないのです。
多かれ少なかれ、介護度は進み、保険給付の金額が増えていく構造です。
介護費用の殆どが人件費
介護サービスにはいろいろな種類がありますが、ほとんどが多額の人件費を伴うものです。
もともと家族が無償で行っていたことを別の人がやっているに過ぎません。
各家庭でバラバラに行うよりは効率的でしょうが、そもそも介護と効率は馴染みが悪いものです。
介護ロボット等が普及すれば別ですが、何故かこの業界では人間のほうが質の高い介護が可能と信じられています。
私はむしろおむつはロボットに交換してほしいと思いますが…。
保険料の給付が増大する構造が存在する
老人ホームなどの介護施設は、介護度に応じた介護給付を最大限受ける前提で経営が設計されています。
本来、必要以上の給付を受けると本人負担も増加するので利用者に拒否されそうですが、なぜか利用者の負担を増やさずに給付だけを増やす仕組みが存在します。
また、本人負担が一定額を超えると還付される制度もあります。
負担が増えないのであれば、本人も家族も手厚い介護を受けたほうが良いので、給付は上限に張り付くことになります。
介護業界は参入が容易
私達が思っているほど介護業界が儲かっているとは思えませんが、保険料や補助金で成り立っている世界です。
初期投資も医療に参入するよりは少なくても済むし、人手不足とは言っても、医者や看護師を確保するのに比べれば容易です。
介護業界が拡大して新しいサービスが誕生するほど、介護保険の給付も増えることになります。
価格競争は起き得ないので(質の競争はありえますが)、給付は増大します。
介護保険制度はどうなるのか
間違いないのは、現在40歳以上で始まる保険料の徴収が、健康保険加入者全員から徴収することになるだろうということです。
そもそも40歳からの徴収と決められたのは、40歳ぐらいから介護が必要になる可能性があるということからでしょうが、現在の制度は介護を社会全体で支えていくものと定義された制度になっています。
そうであれば、社会全体で負担していくという形に変更されて然るべきです。
なにより収入が大幅に増えるというメリットがあります。
一方、給付を減らすのは難しそうです。
介護認定を厳しくする、使えるメニューを減らすということで給付を抑制するかもしれません。
また、介護業界の人手不足により、介護保険を使いたくても使うところがないという状況もありえます。
何れにせよ、今後10年くらいの間では介護保険制度は大きな変革を迫られる時が来ると思います。
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